株式会社いい生活は「テクノロジーと心で、たくさんのいい生活を」というミッションを掲げ、不動産の賃貸・売買仲介から家賃の回収・送金といった賃貸管理まで、不動産業に必要なあらゆるシステム機能をマルチテナント型SaaSとしてワンストップで提供する企業です。同社は2022年から、スマートスタイルが提供する「DBA支援サービス」を利用しており、大きな成果を上げています。このサービスを導入した経緯やその効果について、同社 ウェブ・ソリューション開発グループ データプラットフォーム本部 本部長 田丸大輔様と、同本部に所属する エンジニア 中山大樹様にお話をうかがいました。
システムのAWS移行作業を契機にクエリチューニングが手薄に
弊社は現在、不動産者の業務課題を解決するさまざまなサービスをSaaSアプリケーションとして提供しています。バックエンドのデータベース基盤や認証基盤などは基本的に共通プラットフォーム化し、その機能を各アプリケーションに対してAPIで提供する形をとっています。
この共通データベース基盤は、かつてはオンプレミスの仮想環境上でMySQLを使って構築・運用していました。 2020年にこれらをAWSのクラウド環境に移行し、現在は「AWS Aurora MySQL」を使ってデータベースを運用しています。この移行はかなり難易度が高く集中して臨む必要があったため、その間は弊社のデータベースエンジニアやインフラエンジニアは移行作業で手一杯になっていました。
弊社のサービスは順調に成長を続けており、年々ユーザー数やデータ数、機能が増え続けているため、データベースの負荷も増加傾向です。そのためシステムの性能劣化につながるスロークエリの抽出と改善のチューニング作業が不可欠でしたが、AWSへの移行作業でエンジニアが多忙を極めていた背景もあり、そのままにしておくとデータベースのスループット低下といった問題が顕在化しかねないと危惧していました。
いい生活 田丸 大輔 様
スマートスタイルの「DBA支援サービス」にスロークエリ改善を依頼
いい生活社のDBAとしてチームに参画
スロークエリを正確に特定して分析・改善するには専門性の高いスキルを要するため、社内で人材を育成するのは時間がかかり、また中途採用で即戦力人材を確保するのも極めて困難でした。こうした課題に頭を悩ませていた頃、タイミングよくスマートスタイルさんから「DBA支援サービス」の提案をいただきました。
もともと田丸が前職でスマートスタイルさんと仕事をご一緒したことがあり、MySQLに関して非常に高い知見をお持ちの会社だということは分かっていましたので、渡りに船とばかりにデータベースチューニングの作業を依頼することにしました。
弊社では現在AWS Aurora MySQLを使って、2ノードをアクティブ・スタンバイのクラスタ構成に組んだデータベースを全部で約30系統運用しています。そのうち特にデータ量やトランザクション量が多く、業務上の重要度も高い「物件データベース」「会計データベース」「契約データベース」の3つを中心に、スロークエリの分析・改善作業をスマートスタイルさんにお願いしています。
具体的には毎月1回、直近1カ月の間に発生したスロークエリ情報をお渡しして、その原因の分析と改善案の作成をお願いしています。またこれとは別に、個別に特定のスロークエリの分析をお願いすることもあります。当初は弊社のシステム構成やアプリケーションの特性を理解いただくまで少し時間を要しましたが、クエリチューニングが得意な方をアサインいただいたこともあり、すぐにこちらの要望通りに対応いただけるようになりました。
いい生活 堀家 惇司 様(左) 中山 大樹 様(右)
データ容量が3倍に増加する一方でスロークエリの数は減少
既に2年近くスマートスタイルさんにスロークエリ対応のご支援をいただいていますが、その間に会計データベースと契約データベースのデータ量は3倍近くにまで増加したにも関わらず、スロークエリの数はむしろ減っており、DBA支援サービスの導入効果は着実に表れています。物件データベースは少しずつスロークエリが増えているものの、もしDBA支援サービスを利用していなかったら今以上にスロークエリの問題に悩まされていた可能性は高いと思います。
これだけデータ量が増えると、通常なら費用増を覚悟してAWS Auroraのインスタンスを拡張して対応するところです。しかし、クエリチューニングによってデータベースの性能劣化を最小限に抑えられているので、インスタンス拡張に伴うインフラコストも抑制できています。
また2023年の12月から翌年1月にかけて、MySQL 5.7から8.0にバージョンアップするための事前検証作業を行ったのですが、その際にもスマートスタイルさんのDBA支援サービスで互換性チェックを事前に行ってもらいました。そのおかげで大きなトラブルもなく、2024年夏、無事にバージョンアップ作業を終えることができました。
データ活用による新サービスの開発・提供も視野に
スマートスタイルさんは、MySQLについて高度な知見をお持ちなのはもちろんのこと、AWS Aurora MySQLについても豊富なノウハウをお持ちなので大変助かっています。自社内製で同水準の体制を構築・維持する負担と比較すると、専門のエンジニアを採用・育成されている会社にお任せすることには十分な経済合理性があると考えています。現在もスロークエリの改善を中心に支援いただいていますが、弊社の事業の屋台骨となる重要なデータベースだけに、今後も引き続き充実した支援と最新情報の提供をお願いできればと思います。
また弊社では今後、これまでサービス提供を通じて蓄積してきたデータを有効活用して、お客さまにさらに有用なサービスを提供していきたいと考えています。現時点で具体的なことは申し上げられませんが、例えば「家賃をいくらに設定すれば空室率が何%になり、結果として家賃収入の期待値が最大化されるのか」といったことは、データ分析の観点でも興味深いテーマです。
上記はあくまで一例ですが、こうした構想を将来実現する上でも、スマートスタイルさんにはデータ分析基盤の構築や、データ連係でのご支援を期待したいと考えています。
スマートスタイルの対応範囲